権限委譲 草稿其の一

夜も更けて人気の失せた広い公園に佇む、どこか病的な雰囲気の少女。その瘦身に纏ったシックなドレスはあちらこちらが裂けており、血が滲んでいる。手には淡く不自然に光る日本刀が握られている。その刃は分厚く、研がれている様子は無い。不可思議ななまくら刀の刀身を鍔元まで地面に刺し込む。柄を握ったまま、告げる。

「解放する」

  瞬間、地面から光が漏れ、激しく揺れ出した。そして、槌打つ音が響き渡る。

  それは余りにも速く激しく、最早連続した音としてしか聞こえない。鋼を打ち延ばし、折り重ねて鍛える音。

  耳を聾する程の大音響と、立っていられない位の揺れ。深更とはいえ近隣住民が騒ぎ出さないのが不思議だ。

  やがて地面から大量の蒸気が吹き上がり、即席のたたら場に静寂が戻る。刀が打ち上がったのだろう。握ったままの柄を地面から引き抜く。果たして。

  そこに現れたのは妖しく輝く業物。以前の姿も光を帯びてはいたが木炭のようななまくら刀であり、現状とは似ても似つかない。

  無造作に振る。風を切る音まで高く、鋭い。

「さて、最後の殺し合いを始めましょうか」

  そう話し掛けられた相手は、そんな声も聞こえなかったかのように話し手を威嚇したままだ。最早言葉も理解していないのかも知れない。低く半身に構えている。長く伸びた髪と爪は、触れるものを悉く切り裂く。周囲に火の玉を幾つも従え、瞳も爛々と輝かせたその姿。火の玉の熱か、周囲の空気が歪んでいるように見える。やや黒ずみつつも滑らかなる肌は、通常の拳銃やナイフ程度では傷もつかない。筋肉が人間のとは違うものに変質してしまったのだろう、極限まで絞られたその身体は単純な腕力も人類の限界を超えている。

  そんな「人間以上」を相手取りながらも、小柄な少女は不敵に——否、本当に嬉しそうに微笑んで言う。

「貴女の力を見せなさい、奥菜朱鷺乃(オキナ トキノ)——『時の翁《死神》』!」

 

「——と云うクライマックスはどうだろう、朱鷺乃?」

  発言したのは平凡を絵に描いたような少年だ。年の頃は十七位か。

「何がっ?!意味不明にも程があるんだけど!」

  激しく突っ込んだのは朱鷺乃と呼ばれた快活そうな同年代の少女だ。長く伸ばした髪の色素がやや薄いのが特徴か。

「ふむ。その構図だと私が不可思議な力を使うモンスターハンターでトキノが天災級の怪物ですか義兄さん。面白いですね」

  微笑みつつ物騒なことを言い出したのは、どこか病的な雰囲気のある小柄な少女。先の二人より少し幼い。

「あたしは面白くない!っていうかいい加減、呼び捨ては止めてよ亜希乃、あたしの方が歳上なんだから」

「帰国子女なもので」

「そんな設定無かったよね⁈……っていうか、さっきの妄想だと、ユメト自身はどういう位置付けなのさ?」

「確か、直前に亜希乃に斬り殺されてたな」

「益々物語が破綻してしまいましたね」

「元々、夢なんて脈絡が無いものだからなー」

「夢だったの⁈」

「それでは、序章はここ迄。次回は第一幕『嵐を呼ぶ義妹』。乞うご期待」

「どこ向いて話してるのよ、ねえ!声色がキャラと全然違うし!」

「迫り来る義妹の猛攻に、キミは耐えられるか!」

「亜希乃まで⁈あたしだけ仲間はずれ?何なのよもう‼」

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