受肉刑 草稿17

繊維化しかけている血液を無理矢理溶かして回収する。励起させていた圧縮炭酸ガスはエネルギー準位を下げて静脈血に戻した。

「……お腹空いた」

  あたしの本体である量子電脳にそんなクオリアは無いのだが、機械-人体インターフェイスは頻りに「血糖値の低下エラーです」と五月蝿い。もしかして此奴はグルコースで稼働してるのか?残念だけど、暫くは治療に専念しなければならないので願いは叶えてあげられそうにない。

「よう」

  頭上からそんな声が掛けられた。ジャミングは解かれているので視線を向けずとも分かる。何時も陰気なアイオロスお兄様だ。

「何しに来たのよ、今更」

  面倒臭がりな兄は生身専用に大幅に改造したらしい飛行ユニットを畳みつつ着陸。ふらついているのは、あたし程には人体力学に精通していないからだろう。

「あんな戦闘に巻き込まれるのは御免だ」

「薄情なのね、お兄様は。可憐で可愛くて仕方無い妹が襲われていると云うのに」

「親父から『心配だから見て来い』って云われただけだ。後その気味の悪い口調は止めろ」

  なんて可愛気の無いお兄ちゃん。誰に似たんだか本気で分かりゃしない(in silico で単独発生したもんだから)。

「はい」

  道端に座り込んだままで、手を差し出す。愚鈍な兄はそれを見て小首を傾げる。

「何だ?」

「『何だ?』じゃないわよ。迎えに来たんじゃないの?」

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