受肉刑 草稿15

「チェックメイト……よね?」

  そう、宣言した。疑問形になっているのは、確証を得られていないからだ。現在の神経ハッキング技術では、思考などの高レベル情報までは読み取れない。相手はあの、人間として常軌を逸した存在であるパパが唯一恐れる人間なのだ。未だ切り札を隠し持っていないとも限らない。

「そうだな。生殺与奪の権はお前が掌握している」

  この状況になっても相変わらずの、含みのある尊大な言いざま。『カール』なんて偉そうな名前を持つと、態度まで傲岸不遜になるんだろうか。ちっとも安心出来やしない。

「どういう事?」

  警戒レベルを最大に保ったまま尋問する。或いは此処からが本当の戦いなのかもしれない。

「古典的な手だが……一定期間内に私がアジトに戻らない場合には、市街地にミサイルの雨が降り注ぐ事になっている。勿論、ジャマー搭載だ」

  厄介な。通常のミサイルなら何とか穏便に収める事が出来る。大気中に撒布されているアイオロスお兄ちゃんの分子機械「ニーベルング」には元から、一定以上の運動量を持つ物体に自動的にブレーキをかける機能が備わっている。ところが対象がECM搭載になると話が別だ。分子機械間の通信が妨害されて、機能がガタ落ちになってしまう。さっきまでバンバン銃撃出来ていたのもジャミングが効いているからだ。

「……わかったわよ。とっとと尻尾巻いて逃げ帰れば?」

  ブラフと断ずる証拠も無い。ここは痛み分けにしておこう。

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